よく海外就職をすると“海外経験”という希少性が身に付くので今後のキャリアの価値になるという言説を目にする。
果たして本当にそれは“価値”になるのだろうか?
まずもって希少ということは母数が少ないことを指しており、その少ない事例をもって大きな声で“価値になる”ということは統計的に間違っているということを先に指摘しておく。
その前提の上で、なお数少ない事例から価値になる例と価値にならない例を見ており、特徴をまとめて記すことでこれから海外勤務をする方の参考にしていただきたい。
“価値になる例”
・海外を海外として捉えず、国や状況を具体的に捉えて仕事をしている
-自身がどこで何をしているのかを具体的に捉えて位置づけられると誰か(次の転職先など)に伝える際に論理的かつイメージしやすい形で伝えることができ、評価を得やすい
・仕事で明確な結果を出している
-市場という意味でも生活という意味でも外部環境が困難であるケースが多い中で結果を出していることは“海外で働いたこと”としての評価に繋がりやすい。決して誤解してタフな環境で生活をしたことを価値として捉えないことが重要。
・現地スタッフで成果を出せる組織体制を創った
-上記の一部ではあるが、海外現地法人における、とりわけ工場などを持たない法人における、駐在員のコストはかなりの比率を占める。そのため可能であれば現地スタッフで上手く結果を出し続ける組織体制の構築が求められる。ここを結果として出した人は様々な国・会社から求められる異文化適応力とマネジメント力があることを示すことができる。
これらの例は実際に数が少ないため、海外現地法人の強化や海外進出の際に貴重であると捉えられやすい。
“価値にならない例”
・長く住んでいただけ
-もちろん日本より住みにくい国は多いかと思うが、少なくともその会社に入ったことを自分で選んだ以上、その国に住むことはある意味スタート地点であり、仕事で成果を出していない以上コストだけ積み重ねたとも捉えられる
・対日本人のみかつ質の低いサービスの提供
-海外における日本人をターゲットとしたマーケットではその競合の低さや情報の非対称性により日本で実施するほど質の高さは求められない。ここに甘え、例えば連絡が遅い、不備が多い、事前確認が無いなどという姿勢でサービス提供をして仕事をしている人も目にする。ここまで書けば明らかだが、この仕事の仕方では他に移ろうとしても難しく、時間が経って競合が参入してきたら負ける。
いうまでもないが、上記の様な時間の使い方では価値を認めてくれる会社・人は少ない。
本来価値になりやすい、価値になりにくいという表現を使用した方が適しているのだが、分かりやすく記載するために上記の様にした。
海外で住み、働くと“すごい”と言ってもらいやすくなるが、その言葉に惑わされずにしっかりと今自分がどの様な価値を産みだしているのかを市場・顧客と向き合いながら日々仕事をすることが重要だ。