途上国でのソーシャルビジネスの実態
昨今、国連の発したSDGsという非常にシンプル化された記号をもとにソーシャルビジネスと名乗る起業・企業が増えてきたように思うが、実際にインドに身を置き、ソーシャルビジネスに携わる者としてその実態を記載したい。
大きく分けて2種類あると考えている。
1.現地の人がそのサービスや商品を使用することによって課題解決へと繋がる事業
2.既存のビジネスモデルを資金獲得やPR目的のためにソーシャルビジネスと評している事業
以下上記2点について説明したい。
1.の例は枚挙にいとまがないが、たとえばマイクロファイナンスの代表格、グラミン銀行やGE 社の心電計などにその実態を見ることができる。
過去のビジネスモデルや商品では販売が難しかった金融商品や計測器を、超長期低金利かつ極小口にして展開しつつ、村の目を使いながら回収したり、質や余計な機能を省略し、かつ持ち運びしやすい形、低価格で販売したりなど、社会課題の解決(金融・医療へのアクセスが無い)とビジネスが上手く合わさっている好例と言えるだろう。
もちろん課題はあるが、少なくとも今までその様なサービスへのアクセス機会がゼロであった地域で1になり、それをきっかけに新たな課題が出ているという点を考慮すれば、やはり好例と捉えることができる。
2は現代人、とくに投資家などお金を出す側の人は慎重に考えるべき実態だと思われる。
例えばインドでは田舎の雇用を産むために田舎のインド人に女性用下着を作成しているリコー社のRangorieというプロジェクトが展開されている。一見田舎の雇用を産むことになるので好例に思われる。とはいえ、ではバングラデシュで大量生産をしているユニクロと何が違うのだろうか。それはストーリーの展開程度だろう。ストーリーとしてはインドの田舎を訪問し、女性の下着が美しくないことを知り、インドの人が美しい下着を身に付けられた方が良いと考え、発足したとのことだ。しかし実態はインドの田舎の安価な人件費を、ソーシャルビジネスの名の下に活用し、そのメインマーケットは現状日本らしい。その理由も“ニーズがあったから”という極めて資本主義ど真ん中の理由だ。
同様にクラウドファンディングも実施しているが、ここにもストーリーが記載されている。
実態としては新興国の安価な労働力を活用して高く売れる先進国市場で展開するという時に搾取の固定化とも捉えられるモデルだ。
この様な事業も1の例と同様にソーシャルビジネスと括られる世の中になってきたということは理解した上で自身の行動を決めていきたい。